埋葬先を探し出す

探偵の執念が実を結ぶ-04

火葬場同様葬儀社にもとんと縁のない当方が、この会社の社員の一人から、数ヶ月前のそれも書類上には残らない埋葬場所をたどらなければならない。全て当人の記憶に頼らなければならない事であり、全く持って憂鬱な気持ちになってくる。

まず受付を通じ葬儀内容の問い合わせをする。すると担当者を呼んでくれ、応接室に案内された。話を切り出すタイミングが問題であり、「客ではない」と判断されると態度が一変する事だって考えられる。
いかにも葬儀一切の依頼をするかの如く興味を引きつつ、「ふと思い出したかのように」切り出した。「そういえば最近、私の知り合いもここで葬儀を行っているはずですが。」すると当然「どなたでしょう」と返ってくる。後はこちらのペースで話を進め、当時の担当者のリストを持って来て調べてくれた。結果、式を取り仕切った担当者は当日不在で、担当者名を記憶に留め、同社を後にした。

当方に残された最期の情報、長い日数を経てようやくたどり着いた、たった一人の氏名。
しかしながら、この人物が果たして埋葬場所を承知しているものなのか?既に数ヶ月を経過している。日に何組もの葬儀を担当し、全く記憶にないかもしれない。一刻も早く話を聞きたいはやる気持ちと駄目かもしれない深憂が交錯する。
あれこれと考え倦ねたが結論が出ない。下手な小細工も当人が知らなければ意味を為さない。
結局、再び同社を訪れ正面からぶつかることにした。

すると、当方の意に反し、当人の口からいとも簡単に埋葬場所のヒントが伝えられた。
散々苦労しても判る時はこんなものである。

事の経緯は全くの偶然らしい。
通常、火葬が終われば遺骨を渡し担当業務は終わり、次の予定に移行するらしいが、その時はたまたま参列者の中に顔見知りがおり、その者との話の中に埋葬場所が出たと言うことである。
かなりの日数が経過しており、あいまいながら記憶の断片を辿って貰うと「港区内のお寺・それも
「 麻布近郊」と言う情報が得られた。後はこの担当者の記憶の確かさを信じ、該当地域を端から当たる事となるが、周知の如く港区内には多数のお寺が点在している。

そのお寺の一つに当方の目指すものはあった。

「確かにうちにお墓がありますよ」

そう話す住職の声が、まさに神様の声に思えたものである。

以上。