埋葬先を探し出す
探偵の執念が実を結ぶ-02
当然すぎる事ながら墓の場所は、それを知る人物から入手しないと判明しない。その人物が、頑としてガードを固めているとなると、もうお手上げ状態である。せめておおよそのエリアだけでも判れば片っ端から当たることもできるが、それもできずじまいである。
調査経緯で判ったことだが、埋葬場所(墓の場所)は、墓の場所を移す改葬の場合と異なり、特別に管轄の役所へ届け出る義務もなく、その為、埋葬場所に関しては記録も残っていない。
(調査当時・以下同じ)
やむなく、これまでの経緯と今後の進展の期待ももてない旨伝えると、落胆の色は隠さず、予期していたのか依頼者自身も納得はするが、どうしても諦めがつかない様子であり、再度懇願されてしまった。
新たな展望も見いだせぬまま、これまでの経緯を振り返り、着眼点はないか再検討してみるが、同様である。
あれこれ思案しても良案は浮かばず、やむなく重い腰を上げ、再度原点に戻り、依頼者から受け取っていた委任状を手に母親が生前居住していた当該の役所へ向かった。
ご存じの事と思うが、人が死亡すると荼毘に伏せるための「火葬許可証」と納骨のための「埋葬許可証」を発行して貰う。
前者は、役所に記録が残るが、後者は特別記録はない。当方が欲しいのは後者の方であるが、他に方法も見出せず、回り道とは思えても記録が残る前者から当たるしかない。
あらかじめ断っておくが、当初も当該の役所で「火葬許可証」を入手すべく努めたが、特殊な証明書故、前例がなく断られてしまったという経緯がある。尚、両者は便宜上、「死体火葬許可証」一枚で処理する場合が一般的となっている。火葬場所は決定しているが、埋葬場所に関しては、故人の宗派や親族の意志等により、決まっていない場合がある為という。
再度委任状を提示し粘り強く事情説明を行ったところ、やっとの思いで証明書を受け取ることができた。ここで、前回よりは一歩前進したことになる。この証明書には、死亡者氏名・生前住所・死亡年月などが記載されている。この程度は当然依頼者が知るところであり真新しいものではない。
ただ、その下の欄に記された「何処の斎場で荼毘に伏されたか」という項目を見付けた時は身体の震えを抑えることが出来なかった。この唯一の頼みの綱とも思える斎場の名前と場所を入手した当方は、焦る気持ちを抑え斎場へ向かった。